老化と記憶について研究している、ウェストロンドン大学のゲラー研究所では、50歳以上の男女11,418人にコミュニケーション調査を行った。その結果、定期的なコミュニケーションは長期記憶の維持に役立ち、オンラインツールを頻繁に利用する高齢者はそうでない人よりも記憶力の低下が少ないことが判明したと報告している。
この研究では、参加者に「オンラインツール、電話、もしくは対面で友人や家族と会話する頻度」を尋ねた。その後、さまざまな時間間隔をあけて10個の単語を記憶する、と言ったような「記憶力テスト」を行った。
すると、「対面でのコミュニケーションのみ」と回答した参加者は、オンラインツールや電話を利用していた参加者よりも、認知機能が低い兆候が見られたと言う。今回の研究を主導したSnorri Rafnsson氏は、「これは、多様で、頻繁で、意味のある相互コミュニケーションが長期記憶に影響することを示した初めての研究結果である」と。具体的に言うと、「伝統的な対面での会話をオンラインツールでの活動で補うことにより、高齢者では、より良い影響が出る可能性がありそうだ」と語った。
そして、昨年からの世界的な自粛ムードの中で、「ますます多くの高齢者がオンラインコミュニケーションツール(Zoom、Skype、GoogleMeet)を頻繁に利用するようになっている。テクノロジーが人間関係を維持し、社会的孤立を防ぐのにどう働くか、そしてそれが脳の健康を維持するのにどの程度役立つのか?という新たな疑問も生じてくる」と続けた。
最近では、スマホやパソコンを上手く使いこなす高齢者も多くなってきている。彼らがデジタルツールを利用するメリットは想像以上に大きいかもしれない。しかし、一方では、大人から子どもまで、脳に悪影響を与えると言われているスマートフォンの危険性も危惧される。メリット、デメリットを含め、今後の脳に及ぼす影響には興味津々である。
(2021年5月 / Y.H)
参考:
CNN Health – Talking on Zoom could help older people stave off dementia